和歌山市の観光地である「和歌浦」
古くから日本三景の天橋立と並び称される景勝地でした。
天橋立と言えば、股の下から覗く「股のぞき」で景色を眺めることが有名です。
では同じように、和歌浦で「股のぞき」すると
どんな景色が見えるのでしょう。
片男波の砂嘴を「股のぞき」すると?
和歌浦は、和歌川の河口に片男波の砂嘴(現在の片男波公園)が伸びる景勝地です。
和歌浦(わかのうら)は和歌山県北部、和歌山市の南西部に位置する景勝地の総称。国指定の名勝。
住所表記での「和歌浦」は「わかうら」と読むために、地元住民は一帯を指して「わかうら」と呼ぶことが多い。狭義では玉津島と片男波を結ぶ砂嘴と周辺一帯を指すのに対し、広義ではそれらに加え、新和歌浦、雑賀山を隔てた漁業集落の田野、雑賀崎一帯を指す。名称は和歌の浦とも表記する。
『万葉集』にも詠まれた古からの風光明媚なる地で、近世においても天橋立に比肩する景勝地とされた。
「天橋立に比肩する景勝地」ということを知って思いました。
「ここで天橋立と同じ様に「股のぞき」で景色を眺めるとどうなるんだろう?」
そんな、疑問を持ったのです。
股のぞき
ちなみに「股のぞき」とは、
「腰を曲げて股の間から景観を眺める」ことです。
「直立時の景色と変わり、海が空に見える」ために、
「天橋立が天に架かる橋のように見え」たり、
「天に舞い上がる龍のように見える」ということです。
(参考:天橋立観光ガイド|天橋立観光協会)
はたして、和歌浦でも「天に架かる橋」や「天に舞い上がる龍」のような景観になるのでしょうか?
股のぞきする場所は
股のぞきをするには、高台から眺めて空と海が同時に見られることが必要です。
調べると近くには3つ山がありました。
- 妹背山
- 奠供山
- 鏡山
順番に登ってみましょう。
1.妹背山
まず、妹背山に向かいました。
妹背山は海の中にある島であるため、橋を渡って行きます。
橋は「三断橋」と呼ばれ、和歌山県内に残る最古の石橋ということです。
妹背山に渡りました。
橋を渡った正面には祠があります。
この祠の右を進みながら、妹背山の裏手に向かいます。
この祠は「経王堂」と呼ばれます。
妹背山の裏手に着きました。
「海禅院多宝塔」です。
この多宝塔の右手に、妹背山頂上に登る道がありました。
登ります。
まだ登ります。
途中階段から、石がむき出しの道になります。
あっという間に頂上に着きました。
景色が開けます。
景色が開けます。
対岸と先ほど渡ってきた三断橋が見えます。
さて、片男波の砂嘴を見てみます。
片男波の砂嘴は?
左手の片男波の砂嘴へ目を向けます。
どうでしょう?
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ちょっと高さが足りない気がします。
次の場所へ行ってみましょう。
妹背山と三断橋
名勝 和歌の浦 妹背山と三断橋
妹背山は、周囲250m程の小鳥で、西側に砂岩製高欄付きの三断橋が架けられている。
この橋は、和歌山県内最古の石橋で、紀州藩初代藩主徳川頼宣が妹背山を整備した慶安4年(1651)頃までに建設された中国の景勝地である杭州西湖の六橋の面影があるといわれ、独特の意匠・構造を持つ。欄干、敷石、橋桁、橋脚は何度か補修されているが、橋の原型は、崩れることなく今日まで継承されている。
正面右側の「経王堂」と呼ばれる小堂の中には、梵字で書かれた題目碑がある。
南側の磯辺の道をたどると東端の水辺に観海閣が建っており、西の方向へ石段を登ると多宝塔の前に出る。
和歌山県 和歌山県教育委員会
海禅院多宝塔
日本遺産 絶景の宝庫 和歌の浦 海禅院多宝塔
玉津島の6つの岩山の先頭の妹背山には、紀州藩初代藩主・徳川頼宣の母・養珠院が、徳川家康の33回忌の供養のため、慶安2年(1649)に経石を埋納した。明暦元年(1655)、頼宣は母をしのんでその上に多宝塔を建て、また民衆が自由に干潟の景色を楽しむことができるように、三断橋と海観閣を設けて、妹背山を整備した。
2.奠供山
妹背山から橋を渡って戻ります。
次は奠供山を目指します。
奠供山を登るには玉津島神社の境内に入る必要があります。
玉津島神社は妹背山の対岸です。
参拝し、拝殿を右手に進むと登山道があります。
約5分ほどで頂上に着きました。
名勝 和歌の浦 奠供山(てんぐやま)
神亀元年(724)、聖武天皇は和歌の浦に行幸し、詔を発した。
山に登り海を望むに此間最も好し。遠方を労せずして、遊覧するに足れり。故に弱浜(わかはま)の名を改めて明光浦(あかのうら)とす。宜しく守戸を置きて、荒穢せしむこと勿かるべし。春秋二時に官人を差し遣し、玉津島の神・明光浦の霊を奠祭せしめよ(『続日本紀』)
この時の山が奠供山と言われる。
また、天平神護元年(765)、称徳天皇行幸の際には、奠供山南麓の「望海楼」で雅楽・雑技が演じられたとされる。
江戸時代後期、紀州藩10代藩主徳川治宝により、奠供山の整備が行われ、和歌の浦を一望できる頂上部に拝所が建造された。
明治43年(1910)には、和歌の浦の景観眺望のため、当時東洋一とも称された高さ30mの昇降機が設置され、夏目漱石の小説「行人」に登場している。
和歌山県 和歌山県教育委員会
奠供山の頂上から片男波の砂嘴を眺めます。
先ほどの妹背山と違い、高さもあります。
いよいよ股のぞき(奠供山の頂上から)
さて「股のぞき」の景色は・・・
干潮なので干潟が広がっていますが、空と海の境界が曖昧に感じ
砂嘴が伸びている感じることができるかな?
ちょっと手前の建物が気になりますが、悪くはないです。
それでは、最後に鏡山に登ってみます。
3.鏡山
鏡山の登山口は、玉津島神社の境内を出て向かいです。
鏡山も昔は和歌浦に浮かぶ島だったようです。
名勝 和歌の浦 鏡山
鏡山は塩竃神社の背後の山で、その岩肌は荒れた木理のような薄墨色を呈し、香木「伽羅」に似ていることから「伽羅岩」と呼ばれる。
江戸時代の本草学者貝原益軒は『諸国めぐり』で「和歌の浦の石は皆木理有りて甚だ美也。他州にては未だ見ざる所なり」と感嘆している。
塩竃神社に向かって右側の岩の上には、干潟を望むかのように山部赤人の歌碑
「若の浦に 潮満ち来たれば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」が建っている。
南側の階段を登ると、鏡山の山頂から和歌の浦が一望できる。
和歌山県 和歌山県教育委員会
木理が美しい「伽羅岩」
ほんの数分で頂上に着きます。
鏡山の頂上から片男波の砂嘴を眺めます。
先ほどの奠供山の頂上と違い、手前に建物も無く砂嘴が良く見えます。
高さも十分です。
これは期待できるかも・・・
いよいよ股のぞき(鏡山の頂上から)
さて「股のぞき」の景色は・・・
砂嘴がスッと伸びて、天に架かる橋のように見えませんか?
僕には見えた気がします。
【結論】和歌浦で「股のぞき」すると
和歌浦で「股のぞき」すると、天橋立みたいに見えました。
そして「股のぞき」をするのに最も良いのは、鏡山の頂上でした。
これから和歌浦を訪れる方は、ぜひ「股のぞき」を試してみてください。
「股のぞき」の効果は立証済み
「股のぞき」をすることで、風景の大きさと奥行き感に錯覚が生まれるため、景色を絵画のように感じることが出来て、天橋立や和歌浦で「天に架かる橋」に見える訳です。
この「股のぞき」効果ですが、実は実験により実証されています。
単なる思い込みではなかったのですね。
立命館大学は9月23日、股の下から顔をのぞき込ませたときに視野が平面に見え、遠くのものが小さく接近して見える「股のぞき効果」に関する研究で、第26回イグノーベル賞知覚賞を受賞したと発表した。
(中略)
股のぞきによって視野と上体を逆さまにすると、全体的に物が小さく見え、風景の奥行き感が無くなることを股のぞき効果という。
(中略)
実験結果から、股のぞきによって遠くのものが小さく見えたり、距離が圧縮して知覚したりするのは、視野の逆転ではなく上体の逆転によるものであると突き止めた。
「股のぞき」で立命館大・東山教授らがイグノーベル賞|ITmedia NEWS(2016年09月23日 12時53分 公開)
和歌浦へのアクセス
今回、和歌浦へは和歌山市内からレンタサイクルで来ました。
途中には、ほとんどアップダウンありません。
和歌山市内から、ほぼまっすぐ南に進むと到着します。
国道42号線か、県道135号線を南下します。
国道42号線を進んだ場合は、雑賀城跡のある山の麓のセブンイレブンを過ぎた所にある「和歌浦」交差点を県道151号線「新和歌浦」方面に向かってすぐで妹背山が見えます。
県道135号線を進んだ場合は、「紀三井寺」交差点を右に曲がり橋を2つ渡ると「和歌浦」交差点に出るので、そこを左折するとすぐに妹背山が見えます。
どちらのルートも約30分程度です。
万葉集にも詠まれた景勝地
若の浦に
潮(しほ)満ち来れば
潟(かた)を無み
葦辺をさして
鶴(たづ)鳴き渡る
山部 赤人|万葉集
観光ガイドには載ってない楽しみ方を
今は、観光ガイドやネットで沢山の情報を得られます。
せっかく旅に出掛けたときには、自分ながらの楽しみ方をしてみましょう。
有名な観光地だとしても、誰も気付いていない新しい見え方・感じ方を発見できるかもしれません。
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